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北方領土 色丹島 その6 ロシアの立場

港でお見送りしてくれる色丹島

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ここまで、色丹島での友好的な交流について書いてきましたが、やはり領土問題にも目を向ける必要があります。元島民と現在の色丹島住民の間で心の通った交流が行われているからといっても、領土問題に対するロシアの立場は何も変わっていません。

ビザなし訪問中にも、ロシア側の立場を感じる場面は多々ありました。挨拶に立った副地区長は開口一番、「私たちの島、色丹にようこそ」と明言しましたし、港では、最近設置されたと言う「色丹はロシアの始まり」という看板も見ました。また、斜古丹地区では、軍事力でこの島を奪ったことを称えるかのような戦車のモニュメントもありました。建設中の水産加工工場が完成すれば、雇用が増え、人口が増え、インフラ整備も進むだろう…そうした見通しを私たちに対し繰り返し強調するのも、おそらくなんらかの意図があるのでしょう。色丹島歯舞諸島とともに、日本側が先行返還を期待する島でもありますが、当然ながら、当地の行政スタッフからは、日本への返還を前提とするような言動はみじんも感じられませんでした。

 

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ただ、こうした姿勢は、政府の立場ならばそれほど驚くべきことではないかと。。日本も逆の立場なら、おそらく同じ立場をとるでしょう。

そして、領土を日本に引き渡すことで、プーチン政権が国内的に負うであろう政治的リスクを考えると、領土問題の解決がそれほど簡単ではないことも想像がつきます。

一般的には感情的な対立に結びつきやすい領土問題をきっかけとして、このような交流が続けられていること。竹島尖閣諸島の状況などと比べると、とても前向きなものを感じました。故郷を追われた恨みを抱えつつも、こういう態度があるのかと。

そして、今回は若い人たちが、アニメというツールを使って、国家の壁をすんなりと越える可能性を示してくれたことも大きな成果だったと思っています。

 

遠ざかる色丹島

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